油圧プレスを省エネ化・高機能化しようとすると、よく出てくるのがインバータ制御油圧とサーボ制御油圧です。
どちらも、従来の「モーターを常時回しっぱなしにして、バルブ側で逃がす」油圧から一歩進んだ方式です。必要なときに必要な分だけポンプを動かすため、省エネ、静音、発熱低減に効果があります。
ただし、同じように見えて、できることには大きな差があります。特にホットプレス機で、低圧域の制御、背圧制御、レシピ化、将来の高圧対応まで考えるなら、この違いはかなり重要です。
先に結論を言うと、インバータ制御油圧は「回転数を変えてムダを減らす」方式、サーボ制御油圧は「正逆回転も含めて、油圧の出し入れそのものを制御する」方式です。どちらが上かではなく、目的に対してどちらが合うかで選ぶ必要があります。
インバータ制御油圧とは
インバータ制御油圧は、モーターの回転数をインバータで変えることで、ポンプの吐出量を調整する方式です。従来機のように常時フル回転させるのではなく、低負荷時や待機時には回転数を落とします。
これにより、消費電力、騒音、発熱を抑えやすくなります。既設機の油圧ユニット更新でも導入しやすく、比較的コストを抑えながら改善しやすいのが利点です。
一方で、基本的には「ポンプをどれくらい回すか」を制御する考え方です。精密な位置制御や、圧力の急な変動に対する追従、積極的な逆回転を前提にした制御では、サーボ制御油圧ほどの自由度は出しにくくなります。
サーボ制御油圧とは
サーボ制御油圧は、サーボモーターとポンプ、圧力センサー、位置センサー、コントローラを組み合わせ、実際の圧力や位置を見ながら目標値へ追従させる方式です。
前回のサーボ制御油圧の基本コラムでも書いた通り、考え方は「測って、比べて、直す」です。速度、位置、圧力を別々ではなく、工程プロファイルとしてつなげやすくなります。
サーボ制御油圧の大きな特徴は、制御応答の速さだけではありません。正回転だけでなく、逆回転も制御に使えることが非常に大きな意味を持ちます。
最大の違いは、正逆回転を制御に使えること
サーボ制御油圧の最大の利点のひとつは、ポンプを正転方向だけでなく、逆転方向にも制御しやすいことです。これは単に「戻せる」という話ではありません。油の出し入れを細かく扱えるため、圧力の立ち上げ、保持、抜き、背圧の作り方まで制御の幅が広がります。
特にサーボ制御油圧の本領が出るのは、クローズ回路で正圧と背圧をコントロールする構成です。押す側の圧力だけを見るのではなく、反対側にかかる圧力も見ながら油の流れを制御できるため、ラムの動き、接触、保圧、抜きのすべてを緻密に扱いやすくなります。
たとえば上ラム式のプレスでは、ラムや熱板の自重が油圧側にかかります。このとき、ただ落ちないように止めるだけではなく、背圧を見ながら狙った位置や速度で受ける必要があります。
サーボ制御油圧では、この背圧制御を回生抵抗と組み合わせて扱える場合があります。上側の重量物が下がろうとするエネルギーを受けながら、モーター側で制御し、必要に応じて回生抵抗で処理する考え方です。
一方、インバータ制御油圧では、大量の逆回転を前提にすると、現状では機器構成によってエラーを引き起こす場合があります。もちろん製品や設定によって差はありますが、積極的に逆回転を制御へ使う用途では、サーボ制御油圧の方が設計しやすい場面があります。
ここは選定の分かれ目です。省エネ・静音化が主目的ならインバータ制御油圧でも十分な場合があります。背圧制御、低圧域のなめらかな制御、正逆回転を使った細かな圧力制御まで考えるなら、サーボ制御油圧を検討する価値が出てきます。
対応圧力にも差が出る
もうひとつ重要なのが、対応圧力です。ZeroPressが現場で見ている範囲では、現在市場に出ているインバータ制御油圧ポンプユニットは、21MPaクラスが中心です。
これに対して、サーボ制御油圧ポンプユニットでは、28MPa以上に対応できる構成を選べる場合があります。高い加圧力が必要なプレス機や、シリンダー径を大きくできない設備では、この差が効いてきます。
もちろん、実際の対応圧力はメーカー、ポンプ形式、モーター容量、配管、バルブ、シリンダー、安全率によって変わります。この記事では「どの製品でも必ずそうなる」という話ではなく、方式選定で確認すべきポイントとして見てください。
制御性の違いを現場目線で見る
インバータ制御油圧でも、従来機より扱いやすくなる場面は多くあります。待機中の騒音が下がる。油温上昇が抑えられる。電力のムダが減る。これだけでも、現場には大きな効果があります。
ただし、プレス条件を細かく作り込む場合は、サーボ制御油圧の方が向いています。
- 接触検出:ワークに触れた瞬間を圧力・位置の変化で見やすい
- 低圧なじませ:0ton付近から狙った圧力へつなげやすい
- 圧力プロファイル:何秒かけて何MPaまで上げるかを設計しやすい
- 正圧・背圧制御:クローズ回路で押す側と受ける側の圧力を見ながら制御しやすい
- ログ活用:実圧力・位置・時間を品質説明へつなげやすい
職人が音や手応えで調整していた「押し方」を、条件として残していきたい場合は、サーボ制御油圧の方が相性のよい場面が増えます。
コストと複雑さは、サーボ制御油圧の方が上がる
一方で、サーボ制御油圧は何でも安く簡単にできる方式ではありません。センサー、コントローラ、サーボモーター、ポンプ、制御盤、チューニングが必要になります。既設機へ入れる場合は、機械本体や油圧回路の状態も確認しなければなりません。
インバータ制御油圧は、目的を省エネ・静音・発熱低減に絞れば、比較的導入しやすい選択肢です。そこまで細かな圧力制御やログ活用を求めない工程なら、インバータ制御で十分な場合もあります。
逆に、客先要求が高度化していて、加工履歴や再現性の説明が必要になっている場合、あるいは低圧域の立ち上がりが品質に効いている場合は、最初からサーボ制御油圧で考えた方がよいことがあります。
簡易比較表
- 省エネ・静音化:インバータ制御油圧、サーボ制御油圧どちらも有効
- 導入しやすさ:インバータ制御油圧が有利になりやすい
- 低圧域の細かな制御:サーボ制御油圧が有利
- 正逆回転を使った制御:サーボ制御油圧が有利
- クローズ回路での正圧・背圧制御:サーボ制御油圧で本領を発揮しやすい
- 背圧制御・回生抵抗との組み合わせ:サーボ制御油圧で検討しやすい
- 対応圧力:インバータ制御油圧は21MPaクラスが中心、サーボ制御油圧は28MPa以上も検討可能
- レシピ化・ログ活用:サーボ制御油圧が有利
- コスト:インバータ制御油圧が抑えやすい
どちらを選ぶべきか
選び方は、目的から逆算するのが一番です。
現場のポンプ音、電気代、油温上昇を改善したい。従来機より少し賢くしたい。大きな制御変更までは求めない。こうした目的なら、インバータ制御油圧は現実的な選択肢になります。
一方で、0ton付近のなめらかな加圧、クローズ回路での正圧・背圧制御、正逆回転を使った制御、レシピ化、ログ記録、品質説明まで視野に入れるなら、サーボ制御油圧を検討する価値があります。
特にホットプレス機では、温度による材料変化と加圧履歴が製品品質に直結します。単に「押せる」だけでなく、「どう押したか」を残したい工程では、サーボ制御油圧の価値が出やすくなります。
この記事のまとめ
- インバータ制御油圧は、モーター回転数を変えて省エネ・静音・発熱低減を狙いやすい方式
- サーボ制御油圧は、圧力・位置を見ながら正逆回転も含めて制御しやすい方式
- サーボ制御油圧の本領は、クローズ回路で正圧・背圧をコントロールする緻密な制御にある
- 正逆回転を使った背圧制御や回生抵抗との組み合わせは、サーボ制御油圧の大きな利点になる
- インバータ制御油圧は21MPaクラスが中心、サーボ制御油圧は28MPa以上も検討できる場合がある
- 省エネだけならインバータ、工程再現性・品質説明・高圧対応まで考えるならサーボが有力になる
サーボ制御油圧とインバータ制御油圧は、どちらか一方が絶対に正しいというものではありません。大切なのは、今の設備で何に困っているのか、将来どんな品質要求に応えたいのかを先に整理することです。