「工場にホットプレス機を追加したい。でも、電気容量が足りるかどうかわからない」——設備更新を検討するとき、多くの工場オーナーがぶつかる問いです。
電力会社に増設を頼む前に、まず「今の工場にどれだけ余力があるか」を自分で試算しておくと、検討の精度が大きく上がります。この記事では、主幹ブレーカーのアンペア数を起点に、追加できるヒーター容量(kW)を逆算するステップを順番に解説します。
Step 1 : 工場の最大供給電流を確認する
まず確認するのは、受電盤または分電盤の主幹ブレーカー(メインブレーカー)のアンペア数です。ブレーカー本体に「200A」「300A」などと刻印されています。これが工場全体に流せる電流の上限になります。
・受電盤(キュービクル)の主幹遮断器
・分電盤のメインブレーカー
・電力会社との契約書(契約電力 kVA ÷ (√3 × 200) でアンペア換算可能)
本記事の例では、主幹ブレーカー 300A(3相200V)の工場を想定します。
Step 2 : 既設機器の使用電流を合計する
次に、工場内の既設機器が合計で何アンペア使っているかを把握します。銘板(ネームプレート)のkW数から電流を換算します。
ここで重要なのが、ヒーター(抵抗負荷)とモーター(誘導負荷)では換算式が異なる点です。
= kW × 1,000 ÷ 346
≈ kW × 2.9(A/kW)
= kW × 1,000 ÷ (346 × 0.8 × 0.8)
= kW × 1,000 ÷ 221
≈ kW × 4.5(A/kW)
モーターは回転磁界を作るために「無効電流」が生じます(力率 < 1)。また、機械的な変換ロス(効率 < 1)もあるため、同じkWでも電源から引く電流はヒーターより1.5倍以上大きくなります。
計算例 : 既設機器の電流合計
| 機器 | 銘板kW | 負荷種別 | 換算係数 | 概算電流(A) |
|---|---|---|---|---|
| ホットプレス機(既設)ヒーター | 30 kW | ヒーター | ×2.9 | 87 A |
| ホットプレス機(既設)油圧ポンプ | 3.7 kW | モーター | ×4.5 | 17 A |
| コンプレッサー | 5.5 kW | モーター | ×4.5 | 25 A |
| 照明・制御盤・その他 | — | — | — | 10 A |
| 既設合計 | 139 A | |||
※ 安全マージンとして余力の80〜85%を実用上限とするのが一般的です
Step 3 : 余力からヒーター容量を逆算する
161Aの余力があるとわかったら、これを使えるヒーターの最大容量(kW)に換算します。
= 161A × 346 ÷ 1,000
≈ 55 kW
安全マージン(80%)を考慮すると、実用的な上限は約44kWになります。
→ 余力161A → ヒーター最大約55 kWまで追加可能
(安全マージン考慮:実用上限 約44 kW)
油圧ポンプモーターも忘れずに
プレス機には油圧ポンプが付きます。たとえばモーター 3.7kWなら追加で約17Aが必要です。ヒーターの逆算だけでなく、油圧ポンプの電流も先に引いておかないと、実際に入れるときに「足りない」ことになります。
ヒーター 50kW → 145A
+ 油圧ポンプ 3.7kW → 17A
= 合計 約162A → 余力161Aをわずかに超える
ポンプ込みで考えると、ヒーターに使える余力は 161 − 17 = 144A
144A × 346 ÷ 1,000 ≈ 50kW(安全マージン80%を加味すると約40kW)
契約電力を増やす選択肢
計算した結果、余力が希望のプレス機に対して足りない場合は、電力会社に契約電力の増設を申請することになります。増設には受電設備の改修が伴う場合があり、工事費と時間が必要です。
一方で、カレンダータイマーを使った事前昇温という運用工夫も有効です。作業開始の1〜2時間前に昇温を済ませておけば、他の機器が稼働していない時間帯に電力を使えるため、同時使用ピークを抑えられます。
① 既設機器の中でインバータ化できるものを先行改修(インバータは力率が改善される)
② カレンダータイマーで昇温時間をずらし、ピーク電流を分散
③ 電力会社と相談して契約電力を増設(受電設備改修が必要な場合あり)
この計算が使える場面
- 既存工場にプレス機を1台追加したいが、電力容量が不安なとき
- ヒーター容量の異なる機種を比較検討しているとき
- 見積もりを取る前に「どのクラスを頼むか」の目安を付けたいとき
実際の導入では、銘板kWをそのまま使うのではなく、実稼働時の負荷率・同時稼働台数・将来の設備追加計画も踏まえて判断する必要があります。計算の前提が変わると答えも変わるため、「この工場ではどのクラスが適切か」は個別に試算することをお勧めします。