ホットプレス機の現場では、「油圧ポンプのサーマルが飛ぶ」「リレーを交換したのに再発する」という相談があります。
完全に止まっているわけではない。毎回ではない。リレーを交換すると一度は動く。けれど、しばらくすると同じように非常停止する。
このタイプのトラブルは、原因を一つに決めつけると遠回りになります。油圧回路、電気回路、制御信号、作動油やフィルターの状態、モーター負荷が重なっていることが多いからです。
今回は、実際に現場から届いた相談をもとに、加圧後のオフディレイ中に油圧ポンプ過負荷で停止する場合、まず何を見るべきかを整理します。
この記事について:実際の相談をもとにしていますが、会社名・機種・固有条件は伏せ、内容を一般化しています。通電中の動力盤測定は危険を伴うため、電気担当者に依頼してください。
相談内容:加圧後の17秒間で停止する
相談の概要は次のようなものでした。
- 熱成型機で油圧ポンプのサーマルリレーが複数回動作した
- 下降後、プレスしている途中で油圧ポンプ過負荷となり非常停止した
- 関連するリレー接点にすすがあり、接点不良の可能性があったため交換した
- 交換後も、同じような症状で停止した
- プログラムをモニターすると、加圧後にバルブがOFFしたあと、約17秒間ポンプを回しているタイミングで停止していることがわかった
- サーマル設定値に対して、プレス引き上げ時の電流値にも余裕が少ない
現場から見ると、「なぜ加圧後にポンプを回し続けるのか」「その17秒間に何が起きているのか」「電流値はどこまで許容してよいのか」が疑問になります。
加圧後にポンプを回す理由
加圧後に一定時間ポンプを回している動作は、ロッキング回路や再加圧待機のためのオフディレイ制御と考えられます。
ホットプレス機では、加圧保持中にワークの沈み込みなどで圧力が少し下がることがあります。そのたびに再加圧が入りますが、都度モーターをON/OFFさせると、マグネットスイッチやモーターに負担がかかります。
そのため、加圧後もしばらくポンプを回したまま待機させ、再加圧に備える制御になっている場合があります。
ただし、この待機時間中は、本来ポンプが無負荷または低負荷で回っている必要があります。
もしアンロードできていない、または油の逃げ道がなく高圧のままになっていると、ポンプは高負荷運転になります。結果としてモーター電流が上がり、サーマルトリップにつながります。
最初に見るべき3点
このトラブルで最初に見るべきなのは、細かい部品ではありません。まず、加圧後17秒間の状態を次の3点で切り分けます。
1. 17秒間のポンプ吐出圧
オフディレイ中、本来は圧力が抜ける、または低圧側へ逃げている必要があります。この時間に圧力が高いままであれば、アンロード不良、リリーフ運転、電磁弁の戻り不良、戻り回路の抵抗増加などを疑います。
2. 17秒間のモーター電流
圧力が高い状態でポンプが回っていれば、モーター電流も高くなります。逆に、圧力は低いのに電流だけ高い場合は、ポンプ・モーター・カップリング・電源側など、油圧回路以外も見る必要があります。
3. 圧力スイッチ・再加圧信号・SOL指令のチャタリング
リレーやマグネット接点にすすがある、接点溶着が疑われる場合は、信号のチャタリングも重要です。ポンプ負荷が極端に高くなくても、短時間でON/OFFが繰り返されると、接点が荒れ、焼き付きや溶着につながります。
PLCモニターで、圧力スイッチ入力、再加圧条件、SOL指令が細かくちらついていないか確認します。
電流値はどう測るか
モーター電流は、設備保全の電気担当者に測定してもらうのが安全です。
測定する場合は、動力盤内でモーターへ行く三相配線のうち、U・V・Wを1本ずつクランプメーターで測定します。3本まとめて挟むと、負荷電流としては正しい値が出ません。負荷電流を見る場合は、1相ずつ測定します。
測定場所としては、サーマルリレーの二次側、つまりモーターへ出ていく配線側がわかりやすいです。
安全上の注意:通電中の盤内測定は感電・短絡の危険があります。機械担当者だけで無理に測定せず、必ず電気担当者に依頼してください。
測定結果の読み方
圧力が高く、電流も高い場合
オフディレイ中にアンロードできず、ポンプが高負荷で回っている可能性が高いです。この場合は、以下を重点的に確認します。
- アンロード回路が成立しているか
- 電磁弁が戻っているか
- アンロード弁・リリーフ弁が正常に作動しているか
- バルブOFF後の油の逃げ道があるか
- リターン側の詰まりや背圧上昇がないか
- 作動油の劣化や異物混入でスプールが渋くなっていないか
この状態で使い続けると、サーマルが動作しやすくなり、接点にも負担がかかります。
圧力は低いが、電流が高い場合
油圧回路が高圧になっていないのに電流が高い場合は、ポンプ・モーター側の負荷を疑います。
候補としては、ポンプ内部抵抗、カップリング芯ズレ、モーターベアリング、三相電流のアンバランス、モーター劣化、作動油粘度上昇、サクションストレーナ詰まりなどがあります。
この場合は、U・V・W各相の電流値のバランスを確認します。電圧測定や絶縁測定が必要になる場合は、電気担当者の判断で進めます。
圧力も電流も低い場合
オフディレイ中のポンプ運転そのものは、直接原因ではない可能性があります。その場合は、引き上げ時の高電流がどの程度続いているか、起動停止頻度が高すぎないか、サーマル設定値とモーター銘板電流が合っているか、盤内温度が高くないかを確認します。
「17秒間で止まっているように見える」場合でも、その前の運転でサーマルに熱が蓄積していることがあります。
チャタリングがある場合
圧力スイッチや再加圧信号にチャタリングがある場合、リレーやマグネット接点の焼き付きにつながる可能性があります。
この場合は、圧力スイッチのヒステリシス、圧力保持幅、再加圧判定タイマー、ノイズ影響、PLC入力の安定性を確認します。ただし、制御変更は安全動作に関わります。図面・ラダー・実機動作を確認した上で、慎重に判断する必要があります。
それでも原因が見えない場合は、油圧の土台を整える
ここまでの確認を行っても、原因がはっきりしないことがあります。
停止タイミングが毎回同じではない。圧力や電流の値も極端ではない。チャタリングも明確には見えない。けれど、サーマルが飛ぶ症状だけは再発する。
その場合、いきなり制御変更や部品交換に進むよりも、まず油圧回路の土台を整える方がよいです。
- 作動油を交換する
- リターンフィルターエレメントを交換する
- サクションフィルターまたはサクションストレーナを清掃する
- 可能であればタンク内の沈殿物やスラッジを清掃する
- 清掃・交換後に、改めて圧力値と電流値を確認する
作動油やフィルターの劣化は、今回のような過負荷停止の直接原因とは限りません。しかし、作動油が劣化していたり、リターンフィルターが目詰まりしていたりすると、油圧回路の抵抗増加やバルブの戻り不良につながります。
作動油交換、リターンフィルターエレメント交換、サクションフィルター清掃を行った上で再度確認すると、原因が見えやすくなります。
もし清掃・交換後に症状が軽くなるなら、油の汚れやフィルター詰まりが背景にあった可能性が高くなります。逆に、油圧メンテナンス後も同じ条件で停止するなら、アンロード回路、電磁弁、リリーフ弁、ポンプ・モーター側をより深く見る段階に進みます。
作動油の劣化サインについては、作動油(油圧オイル)の劣化サインと交換タイミングでも詳しく解説しています。
現場に依頼したい確認フォーマット
原因を絞るには、現場から次の形で情報をもらうと判断しやすくなります。
停止タイミング
- 停止するのは、加圧後オフディレイ17秒間のどのあたりか
- 開始直後 / 中間 / 終了直前 / ばらつきあり
加圧後オフディレイ17秒間の圧力
- 開始直後: __ MPa
- 中間: __ MPa
- 終了直前: __ MPa
加圧後オフディレイ17秒間の電流
電気担当者にて、モーター配線を1相ずつ測定します。
- U相: __ A
- V相: __ A
- W相: __ A
音・信号・油の状態
- オフディレイ中のリリーフ音: あり / なし / 不明
- 圧力スイッチ入力のチャタリング: あり / なし / 不明
- 再加圧信号またはSOL指令のチャタリング: あり / なし / 不明
- 作動油交換履歴
- リターンフィルター交換履歴
- サクションストレーナ清掃履歴
- 交換したリレー・マグネットの部品名または写真
この記事のまとめ
- 加圧後の17秒間は、再加圧に備えたオフディレイ制御の可能性がある
- 本来この時間は、ポンプが無負荷または低負荷で待機している必要がある
- 最初に見るべきは、17秒間の圧力・電流・チャタリング
- 圧力も電流も高い場合は、アンロード不良やリリーフ運転を疑う
- 原因が絞れない場合は、作動油交換・フィルター交換・サクション清掃から整える
油圧ポンプ過負荷でサーマルが飛ぶ場合、リレーを交換するだけでは解決しないことがあります。接点が焼けたことは結果であって、なぜその接点に負担がかかったのかを見ないと、同じ停止が繰り返されます。
原因を一つに決めつけず、測定値をもとに順番に切り分けることが大切です。
原因が絞りきれない油圧トラブルは、まずご相談ください
「確認しても原因が絞りきれない」「まずオイル交換とフィルター清掃から進めたい」「測定値の見方が合っているか不安」など、写真・動画・測定値から一次診断できます。
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