前回の記事では、加熱温度230℃を境にコストが一気に上がる理由を概論として解説しました。今回はその中でも特に影響が大きい「配管・継手」について掘り下げます。

配管は、熱媒体油を熱源からプレス熱板まで届け、循環させる「血管」のような存在です。ここが正しく設計・施工されていなければ、いくら他の部品が高品質でも、システム全体の信頼性は保てません。

なぜねじ込み継手では対応できないのか

一般的な熱媒体油配管では、ねじ込み継手(ソケット溶接継手・ねじ込みフィッティング)が広く使われています。施工が比較的容易で、コストも安く、部品の入手もしやすい。230℃以下であれば、適切な施工と管理のもとで長期間問題なく使用できます。

しかし230℃を超えた環境では、昇温・降温の繰り返しによる熱ひずみが問題になります。配管は温度が上がれば膨張し、下がれば収縮します。この動きは一回一回は微小でも、毎日の稼働で繰り返されると、ねじ部に少しずつ緩みが生じます。最終的には油漏れ、最悪の場合は高温の熱媒体油の噴出につながります。

フランジ接続への移行

230℃以上の配管では、ねじ込みに代わってフランジ接続が標準となります。フランジはボルトで締め付けて接合するため、熱ひずみによる緩みへの対応力がねじ込みとは根本的に異なります。

ただしフランジ接続はその分、部品点数・溶接・施工工数が大幅に増えます。フランジ本体・ガスケット・ボルト・ナットのすべてを高温仕様で揃える必要があり、コストと施工時間が上がります。

ガスケットの選定

フランジ接続において、シール性を担うのがガスケットです。230℃以下ではPTFE(テフロン)系や膨張黒鉛系のガスケットが使えますが、高温域では材質の選定が重要になります。

ガスケットが不適切だと、昇温・降温の繰り返しでへたりが生じ、シール性が低下します。一度油漏れが起きてからガスケットを交換するのは、配管を冷ましてフランジを分解する大掛かりな作業になります。最初の選定が将来のメンテナンスコストを大きく左右します。

ボルトの選定と締め付けトルク管理

フランジを締め付けるボルトも、高温環境では一般品をそのまま使うことができません。高温下では鉄ボルトがクリープ(高温での変形)を起こし、時間とともに締め付け力が低下します。適切な合金鋼ボルトへの変更と、正確な締め付けトルク管理が必要です。

「強く締めればいい」という話でもありません。トルクが強すぎればフランジやガスケットを傷め、弱すぎれば漏れの原因になります。高温フランジの締め付けには、適切な管理手順と経験が必要です。

配管材質の選定

配管そのものの材質も、使用温度と流体条件に応じて選定します。一般的な熱媒体油配管にはSGP管(一般配管用炭素鋼鋼管)が使われますが、高温域ではSGPT・STPT(高温配管用炭素鋼鋼管)やステンレス(SUS304・SUS316)への変更が必要になるケースがあります。

材質選定は使用温度だけでなく、圧力・熱媒体油の種類・設置環境(屋外か屋内か・腐食環境かどうか)も考慮する必要があります。一般の設備業者では判断が難しい領域です。

熱ひずみへの対応:パイピング設計の重要性

正しい部品を選んでも、配管の「取り回し(パイピング)」が適切でなければ意味がありません。高温配管では、熱ひずみを逃がすための設計が必要です。温度変化によって配管が伸び縮みする分の「逃げ」を、配管のルート設計の段階で確保しておかなければ、フランジや溶接部に過大な応力がかかり続けます。

この設計は図面上では見えにくく、施工後に問題が表面化することも少なくありません。「つながっていればいい」ではなく、「熱ひずみを受け流せる配管になっているか」が、高温配管設計の本質的な問いかけです。

📋 この記事のまとめ

  • 230℃以上では昇温・降温による熱ひずみでねじ込み継手が緩むリスクが高まる
  • フランジ接続への移行が標準となるが、部品点数・工数ともに増加する
  • ガスケット・ボルトも高温対応品への変更と適切な管理が必要
  • 配管材質はSGP管から使用条件に応じてSGPT・STPT・SUSを選定する
  • 熱ひずみを逃がすパイピング設計が、長期信頼性を左右する

次回は、230℃以上の環境で使用する熱媒体油の選定について解説します。

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