ホットプレス機の熱板を加熱・冷却するために循環させる流体を「熱媒体」と呼びます。使用温度によって熱媒体の種類が変わり、選択を誤るとシステム全体のトラブルに直結します。今回は熱媒体の選び方と、使用温度の限界について解説します。
📚 230℃シリーズ
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熱媒体の種類:水と熱媒体油
ホットプレス機の熱媒体として使われるのは、主に水(熱媒体湯)と熱媒体油(サーマルオイル)の2種類です。使用温度によって選択が変わります。
水(熱媒体湯):60℃以下を推奨
低温域では、水を熱媒体として使うことがあります。コストが安く、扱いやすいという利点があります。ただし、水には大きな制約があります。
沸点(100℃)が低いため、系内の温度管理を誤ると容易に沸騰・吹きこぼれが起きます。特に注意が必要なのが熱電対(温度センサー)の設置位置です。熱電対がタンクや配管の中流に設置されている場合、温度表示では80℃を示していても、ヒーター近傍の局所的な水温は100℃近くに達していることがあります。
💡 推奨:水を熱媒体として使用する場合は、使用温度を60℃以下に抑えることを強くお勧めします。80℃以下であれば使用可能ですが、ヒーター周辺の局所過熱によるリスクが高まります。
熱媒体油:60℃〜高温域をカバー
60℃を超える温度域では、熱媒体油(サーマルオイル)の使用が一般的です。水のような沸点の制約がなく、高温域まで安定して使用できます。熱媒体油にも使用温度によってグレードがあり、代表的なものとしてバーレルサーム200とバーレルサーム400があります。
バーレルサーム200とバーレルサーム400の違い
熱媒体油の選定で重要なのが「使用温度範囲」です。バーレルサーム200は比較的低温域向け、バーレルサーム400は高温域まで対応しています。バーレルサーム400の使用温度範囲は-10℃〜340℃(バルク)です。
「バルク温度」とは何か
ここで「バルク」という言葉が出てきます。バルク温度とは、システム全体を循環している油の主流温度のことです。タンクや配管の中を流れているオイルの温度と考えてください。
なぜバルクを明示するかというと、ヒーター表面のすぐ近くでは、油の温度がバルク温度より高くなるからです。ヒーターが発熱した熱は、まず接触している油膜に伝わります。その油膜が十分な速度で流れ去らないと、局所的に過熱された状態になります。
ヒーター周りの流速が重要な理由
これが、ヒーター周辺の熱媒体油の流速を2m/秒程度確保する必要がある理由です。
流速が不足すると、ヒーター面に接する油が長時間高温にさらされ、局所的な過熱・酸化が進みます。劣化した油はスラッジ(炭化した汚泥)となり、ヒーター表面や配管内部に付着します。スラッジが蓄積すると熱伝達が悪化し、さらに温度が上がるという悪循環に入ります。適切な流速を確保することは、油の劣化を防ぎ、システムを長持ちさせるための基本設計です。
使用温度の上限は「目安」ではない
バーレルサーム400の使用温度上限340℃(バルク)について、重要なことをお伝えします。
「340℃が上限なら、あと10〜20℃くらい余裕があるだろう」——これは大間違いです。
私たちは実際に340℃以上での繰り返し試験を行っています。その経験から言えることは、340℃を超えたあたりから、明らかに機械的な変化が見え始めるということです。配管・シール・ポンプなど複数箇所に、通常の使用では起きないような兆候が現れます。メーカーが定める使用温度上限は、余裕を見て設定されているものではありません。その温度が限界の目安です。
⚠️ 重要:カタログ上の使用温度上限を「まだ余裕がある」と解釈して超過使用することは避けてください。上限付近での長期使用はそれ自体が機器への負担であり、さらに超過すると急激に劣化・トラブルのリスクが高まります。
熱媒体の選定は「システム全体」で考える
熱媒体の選定は、温度範囲だけを見て決めるものではありません。使用する熱媒体の種類によって、配管材質・ポンプ・バルブ・ガスケットの選定もすべて連動して変わります。「この油を使えばいい」ではなく、「この油に合わせてシステム全体を設計する」という発想が必要です。
📋 この記事のまとめ
- 60℃以下では水(熱媒体湯)も使えるが、沸騰リスクがあるため60℃以下での使用を推奨
- 熱電対の位置によってヒーター周りの局所温度は表示より高くなることがある
- バーレルサーム400の使用温度範囲は-10〜340℃(バルク)
- ヒーター周辺の流速2m/秒確保は、局所過熱とスラッジ蓄積を防ぐための基本
- 使用温度の上限はカタログ値が限界。「あと少し大丈夫」は危険な判断
次回は、熱媒体油を循環させるポンプの選定について解説します。なぜ高温域でキャンドポンプが必要になるのか、その理由を詳しく説明します。